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コラム

ウラシマ太郎のロースクール…「弁護士のための」日本昔話

この話は,あくまでフィクションです

むかし,むかし,あるところに,ウラシマ太郎という法学部の大学生がいました。
ウラシマ太郎は,大学4年生で,就職活動をしていました。


あるとき,海に近い浜辺を歩いていると,数人の子供が,ポスドクをいじめていました。
ポスドクとは,大学院の博士課程を卒業したにもかかわらず,仕事のない人のことをいいます。
「ポスドクは,高学歴なのにコンビニでバイトしているんだぜー」
「博士なのに研究活動できないんだぜー」
といって,子供たちが,わーわー言っています。
「これこれ,ポスドクだからといって,いじめてはいけません。」
優しいウラシマ太郎は,子供たちをとめました。
「アメをあげるから,あっちに行きなさい」
といって,子供たちを追い払いました。

「ありがとうございます,お優しい法学部生の方」
と,ポスドクは,お礼を言います。
「お礼に,ロースクールに3日間体験入学させてあげます。私の背中に乗ってください」
3日間ということだったので,就職活動と両立できると思い,ウラシマ太郎は,ポスドクの背中に乗り,ざぶんと,海に入りました。


やがて,海の底の,ロースクールに着きました。
ロースクールは,すばらしいところでした。
あまり名前を聞いたことのない学者の先生が,非常に独自な学説を,誇りをもって語っていました。
「刑法では,団藤重光の学説など,使ってはならない」
と,豪語する刑法学者の先生が,闊歩していました。
「牧野英一先生の刑法こそ,美しい」
このロースクールでは,牧野英一の刑法を教えていました。
その美しい理論体系に,ウラシマ太郎は魅了されました。


ウラシマ太郎は,ロースクールがすっかりと気に入ったのですが,ひとつだけ気になることがありました。
「ロースクールには,実務家教員という方がいると聞いたのですが,あまり見ないように思います。どこにいるのでしょうか?」
ウラシマ太郎は,ロースクールの学者先生に質問しました。
「実務家?ふふ,彼らに何ができるのかね?」
学者先生は言います。
「なにしろ,実務家の弁護士なんて,論文が一つも書けないではないか。それで,法律の実務家というのは,おかしくないかね?」
学者先生は,カラカラと笑います。
ウラシマ太郎は,なにか論理が倒錯しているような気がしないでもありませんでしたが,一緒に,カラカラと笑っておきました。
「そうですよね,研究論文の書けない実務家って,おかしいですよね」

また,あるとき,ウラシマ太郎は,かろうじて生息していた実務家の教員の先生を発見しました。
「実務家の先生,なにを教えてらっしゃるのですか」
「ん?ローマ法だよ」
実務家の先生は,血色のよくない顔色で答えるのです。
「実務家の先生は,なぜ,血色がよくないのですか?」
ウラシマ太郎は疑問を口にしてしまいました。
「うん,ぼくは,実務では食えないからね。収入がゼロなので,ご飯を食べられないんだ。だから,ロースクールでローマ法を教えている…」
ウラシマ太郎は,収入がなくてもローマ法の研究を続けている,高貴な精神にうたれました。
「やはり,実務家は,こうあるべきではないだろうか。」


あるとき,ウラシマ太郎は,はっ,と我にかえりました。
「あっ,よく考えたら,私は,就職活動の最中だったんだ。すいません,ロースクール,体験入学終了でお願いします」
と,ウラシマ太郎は,ロースクールから,俗世間に帰ってきました。
ところが,俗世間にかえってみると,就職活動中だった同期生が見当たりません。
「おや?ロースクールには3日しかいなかったのだが」
ようやく同期生に連絡がつきましたが,彼らは,すでに企業でバリバリ働いていました。
ウラシマ太郎は,はじめて知りました。
ロースクールの3日は,俗世間では3年間にあたるのです。


「わー,ロースクールに行っている間に,新卒の就職活動時期を逃した~」
ウラシマ太郎は,さめざめと泣きました。
そうしたところ,ロースクールから帰るときに,
「けっして開けてはならない」
と言われて渡された玉手箱があったことを思い出しました。
ウラシマ太郎は,就職活動時期を逃したショックで,もうどうにでもなれ,と玉手箱を開けたのです。
なかには,紙切れが一枚入っていました。
「ロースクール修了証書」


ウラシマ太郎は,一気に老け込んでしまいました。


めでたし,めでたし。