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当番弁護に行ったときに、「見通し」を話してはならない

Trouble

弁護士

初めて当番弁護に行ったときには、少なからず驚くものです。
弁護修習のときに、指導担当弁護士につれられて接見室に入ったかもしれません。
しかし、自分が一人で、被疑者と接見するとなると、修習中とは全くちがった緊張感があります。
緊張感があるからこそ、「被疑者に聞かれたことには全て、即答しないといけない」というように気負ってしまうことも理解できます。
ただ、理解してほしいのは、当番弁護では、あまり断定的なことを話すべきではない、ということです。
なぜならば、当番弁護で接する被疑者というものは、現在、捜査中なのです。したがって、全ての証拠は、これから作成されるわけです。事実関係が全部わかっているわけでもありません。
もし、正しい判断をしようとすれば、全ての情報を把握したうえで判断しないといけません。裁判官が判決を書くときには当然、全ての証拠、全ての情報を踏まえたうえで判決を書くわけです。裁判官と同じことを、当番弁護の段階で弁護士がすることは絶対に不可能です。
したがって、当番弁護の段階で被疑者から「自分は有罪になるんでしょうか、無罪になるんでしょうか」などと聞かれても、そもそも回答することは不可能です。回答できなくてもなんら問題はありません。
また、「自分は懲役になるのか。何年になるのか」ということも回答不可能な質問です。
当番弁護の段階で、被疑者からの一方的な情報提供だけで、後日に裁判になったときに懲役何年になるのかを断定することができるなら、それは超能力者です。
弁護士は超能力者ではありませんから、そのようなことに回答する必要性は、全くありません。
また、つい、過剰なサービス精神から、とくに根拠がないが「自分としては懲役2年、執行猶予3年くらいだと思う」などと言ったら、被疑者は絶対に、その数字を覚えています。
そして、後日、国選弁護人が就任したときに、被疑者は
「当番弁護の弁護士の先生が懲役2年、執行猶予3年だと言った」
と、たてに取ります。
国選弁護人にとっては、これほど仕事の邪魔になることはありません。
そして、もし、最終的に刑事裁判が終了した段階で、「懲役3年。実刑」になったとすると、被疑者は「当番弁護の弁護士の先生が言ったのより悪い結果になったから、あの国選弁護人が無能だ」と、国選弁護人の悪口を言うことになるのです。
被疑者にとってみれば、弁護士経験30年のベテラン弁護士も、登録初日で接見が初めての新人弁護士も、等しく「弁護士」であり、その発言には同等の重みがあるのです。
くれぐれも、当番弁護の段階で「有罪か無罪か」「懲役何年か」という回答不可能な問いに対して、軽い気持ちで回答をしてはいけません。
自分の軽率な行動によって、迷惑を受ける、他の弁護士のことを考えてください。

当番弁護でおこなうべきことは、まずは、逮捕・勾留という手続きがどれくらいの期間続く手続きであるのか、起訴された場合にはどうなるのか、という初歩的な法律知識の説明。また、黙秘権があること、調書に間違ったことが書かれていたら訂正をもとめるべきこと、一度作った調書は有効な証拠になるから慎重に対処すること、というような被疑者の防御権の説明。
また、家族に連絡がまだであれば、家族に連絡をすることができる、ということ。
そういう初歩的なことから、はじめればよいのです。